深夜待機、フィナンシェとともに

夜23時すぎ、私は空港へ向かっていた。
もし呼ばれたら、深夜に動く可能性のあるフライト。
でも正直、呼ばれる確率は限りなくゼロだと思っている。

それでも、長くこの仕事をしているせいか、

完全には気持ちをオフにできず、
胸の奥が少しだけそわそわする。

待機場所に着くと、
私は家から持ってきたフィナンシェをそっと取り出した。

深夜の空港は、昼間とは別の顔をしている。
人の気配は薄く、音も少ない。
甘くてしっとりした焼き菓子が、
緊張と眠気を同時にゆるめてくれた。

呼び出しは、ない。

その時間を使って、
翌日に控えているフライトの準備を少し進める。
流れを頭の中でなぞり、
持ち物を静かに確認する。

「この時間にやっておいてよかったな」
そう思いながら時計を見ると、残り時間はわずかだった。

結局、呼ばれることはなく、
そのまま待機は終了。

今日の私の仕事は、
フィナンシェを食べて、心と頭を整えることだったらしい。

これから帰宅して、シャワーを浴びて、
イヤホンでアニメの『君に届け』を流しながら眠る予定。

明日は、家族と過ごすゆっくりした朝。
そして昼過ぎから、また仕事へ向かう。

静かな夜の終わりは、
次の一日への、ささやかな助走だ。

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